証券税制の優遇措置
2006年 09月 06日
2年後には倍の20%
日銀の資金循環統計によると、二〇〇五年末の家計の金融資産に占める株式・出資金の比率は、前年末の8・3%から11・4%に、投資信託の比率は同2・5%から3・4%にそれぞれ上昇しました。これは、新たに元本割れリスクのある金融商品を購入した個人投資家が着実に増えたことを示します。
株式相場の上昇やネット取引手数料の値下げにより、気軽に投資に踏み出す人も多いようです。ただ、初心者は投資運用の総合コスト負担とリスクを事前にしっかり把握することが肝心です。特にコスト面では、税負担にも正しい理解が必要です。
では、投資に関する税金の仕組みはどうなっているのでしょうか。
まず、現在の証券税制には〇三年一月から、税率を軽減する時限的な優遇措置が適用されていることを忘れてはいけません。上場株式の取引売却益や配当収入に対する課税率は10%です。しかし、本来は倍の20%の税率を、株式市場活性化の景気対策として暫定的に引き下げたものです。昨夏以降の相場上昇に伴い、新たに株式投資を始めた人が年度末の確定申告で認識している税率は、今後、倍の課税負担に戻される可能性があるということです。
しかも、税率優遇が切れる期限は目の前に迫っています。売却益課税は〇七年末、配当金課税は〇七年三月いっぱいで優遇措置の適用期限が切れます。
政府が優遇措置の継続、または現行税率を基本税率とする税制改正を行わない限り、二年後の〇八年からは株式投資の税負担は自動的に倍増することになります。
税金が上がっても、現物株式を比較的短期で売買取引している人や、配当金をお小遣い程度に考えている人は、その時点で投資行動を見直せば大きな影響は受けないでしょう。
半面、投資商品からの分配益を生活資金に組み入れている人や、現在の税負担を前提に中長期の運用商品に投資している人には、資産計画の目算が狂う事態が考えられます。
税優遇は現物株式だけでなく、国内外株式の投資信託商品にも同じように適用されており、投資信託の運用分配金や解約・償還差益への課税率は〇八年四月以降、10%から20%に引き上げられるためです。
個別に投資先を選ぶ現物株式の売買に比べ、投資銘柄があらかじめ組み合わせて商品化されている投資信託は購入しやすいうえ、銀行や郵便局の窓口でも販売しているため、年配の人や初心者の多くが購入しているといわれています。
投資信託協会によると、株式投資信託商品の三月末の運用残高は四十四兆九千五百六十九億円に達し、バブル期の八九年十二月末に記録した過去最高(四十五兆五千四百九十四億円)に迫る勢いです。この中には、税優遇の期限切れを明確に認識していない人が相当数いることが心配されます。
税制度はそう頻繁に変更されるものではありませんが、個人投資家は今年度からの証券税制の議論には十分注意を払う必要がありそうです。
(池田昇)posted by FujiSankei Business i.
by mikey2010
| 2006-09-06 01:43
| *_*株式