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by mikey2010
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(2006年3月15日号)【ケービーアール事件】

C┃O┃N┃T┃E┃N┃T┃S┃
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■ 今週の事件【ケービーアール事件】
▽ <争点>
取締役の従業員としての退職金請求権の有無

1.事件の概要は?
2.前提事実および事件の経過は?
3.元取締役Xの言い分は?
4.判決は?



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■ 今週の事件

【ケービーアール(以下、K社)事件・大阪地裁判決】(平成17年7月21日)

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 1.  事件の概要は?
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本件は、K社の取締役であったXが同社に対し、従業員兼取締役であったことを理
由に既払い分を控除した従業員としての退職金(約650万円)等を求めたもの。

これに対して、K社は(1)Xは取締役であって従業員を兼務していない、(2)
会社設立以前にXが従業員であったとしても、K社は会社設立以前のXに対する退
職金支払い義務を承継していない、(3)XとK社との間には債権債務がない旨の
合意があるとして、Xの請求を争った。



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 2.  前提事実および事件の経過は?
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<XおよびK社等について>

★ Xは昭和38年11月、洋書の輸入販売等を業とするT社に入社し、主に営業に従
事した後、63年3月には同社の取締役に就任した。さらに平成5年頃、専務取締役
としてA営業所に赴任した。

★ K社はT社の100パーセント子会社として、6年3月に設立された。同社設立に
際し、T社の卸売部門(物流管理部門)については、K社が行うこととなり、同部
門の従業員らもK社に転籍し、同社において勤務するようになった。

★ XはK社の設立と同時に同社の取締役に就任したが、業務の状況や就労の状態は
変わらず、専務取締役としてA営業所を取り仕切っていた。Xは一般の従業員と同
様の業務にも従事していたが、勤務時間については自ら管理しており、一般の従業
員と異なって、残業手当を受領することはなかった。


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<Xに対する退職金等について>

▼ 10年2月、T社はK社の株式および経営権をP社に対して譲渡し、Xは他の2
名とともにK社の代表取締役に就任した。11年4月当時、XはK社から基本給の名
目で月額64万1000円を支払われていたが、同年6月、同社を退職した。

▼ K社は12年10月頃、Xに対し、128万2000円を翌13年1月までに分割して支払
うことを約束した。その合意に際し、K社はXに対して「今回のお支払い終了後、
貴殿と弊社の関係において金銭の貸借に関しては一切ないことをここに確認するも
のとする」旨が記載された書面を送付したが、Xはその書面の文言について異論を
唱えたり、未払いの退職金がある旨の主張をしたりすることはなかった。

★ Xの基本給を64万1000円とすると、給与規程上の退職金額は37ヵ月分を乗じ
た額である2371万7000円となるが、Xは16年3月までに退職金として、1718万
2060円を受領している。



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 3.  元取締役Xの言い分は?
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1)XはK社の従業員を兼務していた!

▼ XはK社設立時から同社の取締役であったが、一般の従業員と同様の業務に従事
しており、従業員兼取締役である。

▼ K社においては、取締役会はほとんど開催されることがなく、経営の方針につい
ては、代表取締役が専断し、Xを含む他の取締役はその方針を実現するための方策
を助言していたにすぎない。

▼ XはT社において従業員の地位を有しており、K社に異動することによって、職
場も業務も変わっていないから、K社においても従業員たる地位を有している。

▼ XはK社の代表取締役として就任登記されていたが、同社の株式を所有していた
P社の経営陣が日本での信用がないことから、単に金融機関に対する関係でXを連
帯保証人に加える趣旨で登記されたにすぎず、代表者としての実質的な権限は与え
られていなかった。


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2)Xに対する退職金支払債務はT社からK社に承継された!

▼ K社は、T社が同社の物流管理部門を分社する目的で設立された会社であり、そ
の際、同部門に従事していたXを含む従業員らについては、何ら地位を変更される
ことなく、K社がその雇用関係(退職金支払い義務を含む)を承継した。当時、T
社とK社は実質的に同一であったから、K社における(退職金に関する規定を含む)
就業規則も全く同一のものとされた。

▼ XがK社に対し、未払い給料の支払いを迫ったところ、12年10月、分割により
支払う旨の通知があった。この通知には「貴殿と弊社との関係において、金銭の賃
借に関しては一切ないことをここに確認するものとする」と記載されているが、X
はこれを了承したことはない。



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 4.  判決は?
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▼ 単に一般の従業員と同様の業務に従事していたことをもって、従業員を兼務して
いたと言うことはできない。

▼ XはA営業所に赴任した際には専務取締役であったこと、代表取締役と協議して
業務執行にあたっていたこと等から、Xは少なくとも専務取締役としてA営業所に
赴任した後に関しては会社の指揮命令下で労務を提供していたということはできず、
従業員であったと言うことはできない。

▼ T社はXに対し、入社から取締役就任までの間の退職金を支払ったと言うべきで
あり、Xの取締役就任時において、その従業員たる地位が清算されたものと言うこ
とができるから、Xは従業員としての退職金請求権を有しない。

1)Xの請求を棄却する。
2)訴訟費用はXの負担とする。


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by mikey2010 | 2006-03-16 08:53 | *_*法律・訴訟・トラブル